大栗川倶楽部レポート

 

大栗川は八王子市鑓水の御殿峠付近を源とし、多摩市連光寺で多摩川に注いでいる。
 
流域周辺は、古代から連綿と今に続く人々の暮らしがある。八王子市堀之内No72遺跡ではヒスイが4点も出土し、多摩丘陵における縄文の中心的な集落であったという。津久井、甲州を経て新潟県糸魚川につながるネットワークが想定されている。
 
また大栗川に沿う道は、道志川の鼻曲がり鮎を献上の品として江戸へ運ぶ鮎街道でもあった。津久井から橋本、小山を経て、松木、関戸、府中、内藤新宿、江戸城へと鮎かつぎが走ったという。
 
このように、時代により様々な顔を持つ大栗川とその周辺を訪ねて、これから何回かに分け、水源付近の鑓水まで辿り、探ってみた。
 
今回、大栗川はどこを流れていたかをテーマに、昭和初期と現代の地図や地形を見比べながら旧流路の痕跡を探し、かつての大栗川の景観の復元を試みてみた。宅地開発により護岸工事がなされ、流路は直線化し短縮されてしまったが、昔の大栗川は大きく蛇行していた。その景観を確かめ、そこから見えてきたものを報告する。
 

歴史的事実の理解から現代を読み解く
 
過去の歴史的事実に関する体系的な理解はもちろん、現代社会の動きも歴史的・論理的に考察して大局的に判断できることをめざしています。
 
地方文化史・古文書学・美術史・女性史・家族史など、文献を深く読み解き、野外でのフィールド調査がなによりも大切かと考えます。


はじめに、モノ資料(石器や土器などの遺物、住居などの遺構)の収集と読解をめざし、大栗川流域の古地図、写真を探索することから始めました。
 
探索した古地図を使って、川の流れや農作物栽培の方法や過去の穀物生産の変遷読解に取り組みました。
 
本物の穀物も博物館から借用し、実際の流域との対応関係も検討しました。団長の講義や図書で得た知識とともに五感で得た知識を駆使して以下の知見を得ました。
  
史籍講読
 
過去の事実の記録、思索・創作などの文章を正確に読み取ることなしに歴史を知ることはできません。過去の文書を読んで内容を理解していくことは、歴史学を学ぶ上での基本です。前近代の日本史の史籍には、日本式漢文や古文が使われます。中世の史籍を読むため、漢文か古文を読むことになり、必然的に漢文・古文の読解力、内容理解力が試され難渋しました。「史料」と「地図」をもとに当時の出来事・人間関係・時代背景などをあわせて調べ、書かれた文章の「真の意味」を読み取ることで、意外で奥深い歴史上の事柄を、自分の力で「史料」から発見する楽しさがありました。
  
文化遺産
 
文化遺産の内容と、基礎的知識をなど修得し、遺跡・遺構、彫刻、工芸、装飾美術、建築などについて実際の作品、遺産に触れ講演会への参加によって最先端の研究にふれながら、現場で遺産を調査してきました。また、いくつかの班に分かれて地域住民からの聞き取り調査も行い、興味と感動を実感することができました。